イベント概要
先端の再生医療をはじめ、私たちの将来の健康的な生活やスマート社会を叶えていく基盤として、化学の知識や技術を駆使して創製された高度な機能性物質の開発が必須です。今回は、医療やバイオ分野に活用しうる新しい機能分子に関する研究シーズについてご紹介します。
【日時】2021年3月17日(水) 13:00~
【内容】
・講演1 「アミノ酸からつくるスマート高分子材料」
古賀 智之 氏(理工学部 教授)
アミノ酸はタンパク質を構成している生体分子で、優れた機能性を有しています。私達はアミノ酸のもつ「構造多様性」と「類似性」に着目した新しい高分子材料の開発を進めています。基本骨格が同じであるため、同一の合成戦略で種々のアミノ酸ビニルモノマーを調製できます。また、それらを高分子化することにより、様々な構造/機能設計が可能となります。本講演では、温度応答性ポリマーの精密設計や形状記憶性・インジェクタブル性ハイドロゲル材料等への展開について紹介します。
・講演2 「活性酸素を自在に操る分子」
人見 穣 氏(理工学部 教授)
活性酸素は老化やさまざまな病気と関連しており、体に悪いとされてきましたが、一方で、我々の生命活動を維持するために必要な分子であることも分かってきました。そのため、活性酸素を用いることで様々なことができます。例えば、不要な細胞を死滅させることも、細胞の形を変えることも可能です。我々の体の中には活性酸素の発生と消去を司る酵素が存在します。本講演では、酵素の機能をもたせた機能分子の開発と活性酸素の操作についてお話しします。
・講演3 「環状オリゴ糖からつくる医薬品,解毒剤および人工血液」
北岸 宏亮 氏(理工学部 教授)
デンプンと同じ組成を持つシクロデキストリンと呼ばれる環状オリゴ糖があります。シクロデキストリンは人体への安全性が高く、一般に消臭剤や食品添加剤としてよく使われています。我々の研究室では有機化学の手法をつかって、シクロデキストリンに新たな面白い機能を付加することに挑戦しています。本講演では、シクロデキストリンを使ったドラッグデリバリー、CO解毒剤、ヘモグロビン代替化合物など、我々が行っている「ものづくり」について紹介します。
・講演4 「無機物の硬さと有機物のしなやかさを複合化する」
水谷 義 氏(理工学部 教授)
骨や歯のようなバイオセラミックスは、無機結晶であるヒドロキシアパタイトと有機高分子であるコラーゲンの複合体であり、無機結晶の硬さと有機高分子のしなやかさの両方の特性が発現したユニークな機械材料です。しかし、無機結晶と高分子を単に複合化しても必ずしも優れた特性が出るわけではなく、むしろ、複合化する前よりも機械的な性質が悪くなることも多いのが実情です。本講演では、骨の生合成の機構から、効率的な複合化の方法について紹介します。
【定員】100名(対象:企業、研究機関の方)※先着順
【参加費】無料