「加盟校レポート」8(後編) 和顔館とラーニングコモンズ:龍谷大学 林久夫先生
■学生の主体性を育む運営方針
こんにちは。教まちや事務局です。
前回の「加盟校レポート」8:龍谷大学 林久夫先生のレポート前編の続き、今回は後編をお送りします。
龍谷大学の和顔館(わげんかん)「ラーニングコモンズ」について、龍谷大学学修支援・教育開発センターの長谷川センター長、井上課長、石橋さんへのインタビューの続きです。
宜しくお願いいたします。
林先生及び事務局(以下、林):コモンズの雰囲気作りや、学生の活用などについては、何か工夫をされたのでしょうか。学生がコモンズを使うに当たっては、誰かに教えてもらったりするのでしょうか。
龍谷大学(以下、龍):ある学部やゼミでは発表があるので、自然とプレゼン練習等にこのような形式が使いやすかったのだと思います。利用し始めるきっかけは、学部での取り組み、学問分野のカラー、先生の指導等により、様々であるかと思います。
グローバルコモンズには外国人が待機している。スチューデントコモンズのアクティビティホールでは、プレゼンの練習、クリエイティブエリアでは壁に投影して議論、ナレッジコモンズでは、資料を広げて議論する。それぞれのスペースごとの雰囲気が作られてきていますね。
さきほども申したのですが、開設当初はお昼ご飯を食べる目的で使う学生もいましたが、徐々に勉強目的に来館する学生の割合が増えていることを見ると、お互い意識・刺激し合うことによって学生の認識に変化がもたらされたのかなと思います。それはコモンズをフル活用しようとする学生がいたからで、もともとそのような学生が潜在的にいたということだと思います。コモンズを整備したことによって、そのような学生の姿が表に現れ、周りの学生が影響されてきているという好循環ができつつあります。
他大学のラーニングコモンズも見させてもらいましたが、本学のスタイルはより、オープンだと思います。様々な機器などモノが増えるとルールが増えるので極力シンプルにしています。
龍:9時から21時45分です。貸出機器に対応するスタッフが開室時間中は常駐していますが、このスタッフが「いる」というのが居場所作りには大事であったと思います。
実はオープン時には備品は十分ではなかったのですが、ホワイトボードが納品され、チューターが常駐するようになって雰囲気が変わり、1つの形が完成した感じです。飲食は可能ですが、隣にラウンジを設けているので、できるだけそちらに誘導しています。学修成果として可視化していくのは大事ですが、今はこのような場で見た活動を記録していき、それを各方面で発信していくことが大事だと考えています。
■今後の評価やフィードバック等について
林:どうなれば、「学生が利用している」と評価できる状況になるのでしょうか。
龍:まず午前中の利用者を増やすことを1つの課題としています。また、午後の利用形態で多いのがゼミ活動の続きといったところでしょうか。お昼過ぎの3、4講時にゼミがあり、その後も同じメンバーで継続してコモンズで活動するといった形です。そういった学習目的で活動している学生で席数の7割を埋めるのを一定の目標としています。
林:運用を開始してから、学生からのフィードバックは受けていますか。
龍:コモンズに関わってもらっている学生スタッフにしてもらっています。大学院生がコモンズチューターとして研修を受けてライティング支援を行っています。その他スチューデント、グローバル、ナレッジそれぞれに関わる学生がいます。スチューデントであれば九学部合同学生会、グローバルではSABSという留学経験者の学生スタッフ、ナレッジではライブラリーサポーター。そのような学生からのフィードバックを受けています。また職員が近くにいるので、何かあったり意見があれば直接言ってくるということもあります。 いずれは学生の利用者から、直接アンケートをとる予定です。
林:学生を集めるのに特段の工夫はされましたか。
龍:最低限の掲示をしながら、学生に新しいところがあるという認識をもってもらうようにしました。ラーニングクロスローズ(これまでの学修支援施設(場所))が一定期間使えなかったので、待ちわびた学生が一気に来た感じはあります。またコモンズができる前から、コモンズに興味を持っておられた先生に紹介された学生が来ています。実はコモンズと呼んでいるのは教職員だけなのです。学生の多くは、「コモンズ」ではなく「こういう場所」ができたという認識です。コモンズに行きましたかと聞くと、首を横に振りますが「あそこの場所のこと」と教えてあげると「行ったことがある」といった感じです。 林:学生の潜在能力としての主体性を引き出している感じがありますね。
龍:学生に大学として何かをやってほしいと思っていても、待っているだけでは学生は動かない。そのため、働きかけるがあまり上手くいかない。こういうジレンマって多いのですが、潜在的に活動していた学生の動きをここで「見える」化させることで、他の学生と刺激しあう関係ができたと感じています。物理的に学生の動線上、しかも1階にこのようなスペースがあるのが大きいですね。今までも学生の自主活動はあったのでしょうが、見えませんでした。それがコモンズによって顕在化したということだと思います。学生が何かをやっている姿は学生にも教員にも自信につながります。
■最後に
林先生、取材にご対応いただいた学修支援・教育開発センターの長谷川センター長、井上課長、石橋さん、ありがとうございました。
今回、取材を通して、和顔館がオープンしてから、深草キャンパスにおける学生の意識に変化が生じてきていることがわかりました。その鍵は、キャンパス動線上の建物というだけでなく、徹底的に行われた「見える」化にあるようです。今まで分断されてきた各機能(教室、コモンズ、各種窓口、事務室)が1か所に集まり、その様子を見ることができるようになりました。それによって、たまたま和顔館を通りかがった学生、教職員が他の学生の活動を目にし、学生は刺激をもらうことに繋がり、教職員も自分たちの活動に自信をつける。そのような相乗効果を生み出す構図が目に浮かびます。
利用者からの評価や時間帯による利用者のバラツキ解消といった課題は残されているようですが、長谷川センター長の言われた「利用者に助けられている」という一言が印象的でした。この和顔館「ラーニングコモンズ」は多様な利用者に支えられ成長していく施設になりそうな予感がいたしました。
以上、「加盟校レポート」龍谷大学 林久夫先生編をお送りしました。