「加盟校レポート」13 京都光華女子大学 女性キャリア開発研究センター:京都光華女子大学 阿部一晴先生
■2016年4月に開設した女性キャリア開発研究センターとは?
こんにちは。教まちや事務局です。
大学コンソーシアム京都のFD企画研究委員の先生方にご紹介いただく「加盟校レポート」シリーズ第13弾です。
今回は、京都光華女子大学キャリア形成学部教授阿部一晴先生より、2016年4月に開設された「女性キャリア開発研究センター」をご紹介いただきます。
近年、女性活躍推進法の制定など、何かと話題になっている女性の活躍。女子大学では実際にどのような取組が行われているのでしょうか。
取材にご協力いただいたのは、女性キャリア開発研究センターの加藤千恵センター長と、真東美也子副センター長です。
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阿部先生及び事務局(以下、阿部):まず初めに、女性キャリア開発研究センターの設立の経緯をお聞かせください。
京都光華女子大学女性キャリア開発研究センター(以下、光華):本学は仏教精神に基づく女子教育、有為なる女性の育成を掲げ、キャリア教育と就職支援の機能を備えていたキャリアセンターを運営してきましたが、近年は、女性の生き方の多様化や女性活躍推進法などによる女性支援策の整備が進んでいます。本学では、在学生には卒業して10年、20年経っても働き続けていくという意識の醸成と能力開発を、卒業生には卒業後の再就職支援やキャリアの再開発が必要であると考えました。そこで、2016年4月、それまでのキャリアセンターを女性キャリア開発研究センターと就職支援センターに組織再編しました。
女性キャリア開発研究センターの役割としては次の6つが設定されました。
①女性のキャリア開発に関する研究・教育
②女性のキャリア開発のための産官学の連携と女性研究者の支援
③女子教育に関する教育課程・教育支援策の開発
④女性教育を実践する教育手法の開発
⑤在学生のキャリア教育
⑥卒業生を中心とした女性のキャリアの再開発
特に⑥については、今後センターが力を入れていくべきテーマだと考えています。
本学の学生は、一般企業に就職する学生と看護師や保育士などの「対人専門職」に就職する学生の2パターンに分けることができますが、一般企業職と対人専門職ではキャリアや仕事内容などに違いがあります。今後はそれらの特性を踏まえ、母校としてできる支援策を探っていく必要があります。そのため、当センターの事業にはすべての学部・学科から教員が参加しています。
阿部:特に⑥の卒業生を中心とした女性のキャリアの再開発に力を入れたいとのことですが、どのような思いがあるのでしょうか。
光華:本学は現在、大学・短大を含め4学部7学科構成ですが、学部を改組してきたため、以前と比べて構成が大きく変わってきています。卒業後、結婚して名字が変わったり、出産退職をしたり、居住地が変わって連絡が途絶えたり、また在籍していた学部が再編されて大学と疎遠になり、卒業生のキャリア把握が難しくなるという現状があります。将来展望として、卒業生と在学生を結ぶネットワークを構築し、在学生には卒業生の働く姿を見て仕事に対する意識を醸成してもらいたいという思いがあります。それには大学、卒業生の双方向での情報提供により、卒業後も大学と関わりを持つ仕組みが必要です。
また、働くことに対して悩む卒業生もおり、転職を検討することもあります。勿論、本人が望むのであれば転職相談にも応じますが、本学では「辞めずに働き続ける支援」にも力を入れてきたいので、必要に応じて、今の職場で働き続けるための支援を行いたいと考えています。
阿部:在学生の働く意識を醸成したいとのことですが、現在、女性キャリア開発研究センターでは在学生に対してどのような教育を行っているのでしょうか。
光華:現在はキャリアセンター時代から実施しているインターンシップやボランティア活動の支援を行っています。また、他大学にはない取組としては、「学Booo(まなぶー)」というものがあります。学Boooは、教職員がテーマを自由に設定し、学生が関心のあるテーマを選択して学ぶ自由参加の学習コミュニティで、座学型、PBL型、体験・実習型の3種類があり、課外活動のようなものです。今年度も、「鹿肉の普及活動」、「日本の伝統美『和テイスト』研究会」、「和太鼓と篠笛体験」、「さーくるK(韓国)」、「お金を学Booo」などが活動しています。
■女性が働くということがどういうことかを在学生に知ってもらいたい
阿部:女性キャリア開発研究センターは「女性が働く」ということを研究する機関でもありますが、在学生は働くことに対してどのような意識を持っているのでしょうか。
光華:ある授業でアンケートを行ったところ、かなりの学生が「結婚、出産をしたら退職して再就職」という意識を持っていました。母親世代のライフコースがお手本になっているのだと思いますが、いったん離職すると再就職は難しく、生涯賃金にも大きく影響するのが現状です。
今の学生は母親世代に比べれば、「働き続けたい」という意識は強くなっていると思います。これは、経済成長の停滞によって共働きをせざるを得ない状況も影響していますが、乳幼児を人に預けて働く女性に対して厳しい目を向けていた社会が、待機児童ゼロを目指す社会に変わったことも関係しています。企業も有能な女性を採用し雇用を継続するメリットを考えるようになり、育休制度の充実や女性活躍を明確に打ち出すなど、以前に比べて女性への支援策を強化しています。女性が働き続ける環境が整いつつあり、結婚や出産をしても離職しないで留まった方がよいと学生に説明していくと、「働き続けるライフコース」を具体的にイメージできるようになります。
阿部:女性が働き続けるためには企業側の変革も必要ですが、企業との連携はどのように図っていくのでしょうか。
光華:今後数年をかけて京都の企業にヒアリング調査を行い、女性が仕事を続けていくための支援策を一緒に検討していきたいと考えています。また、京都市男女共同参画センターウィングス京都※とも連携していきます。来年1月14日(土)には、ウィングス京都主催のシンポジウム「京で輝く!女性活躍推進プロジェクト:ロールモデルトーク」が、市内の女子学生を対象に本学で開催される予定です。
※ウィングス京都…「女性の自立と社会参加を支援する」ことを目的に京都市によって開設された施設。2006年4月に、「京都市女性総合センター」から「京都市男女共同参画センター」へと名称を改め、誰もが性別にかかわらず、個性と能力を発揮し、いきいきと生きられる社会、男女共同参画社会の実現を目的としている。
阿部:在学生にはロールモデル(具体像)の提示が必要だと思いますが、どのように考えておられるのでしょうか。
光華:在学生の最も身近な先輩女性は母親ですが、社会環境は大きく変化しています。キャリアビジョンを描くには、母親世代よりも、20代30代の卒業生がいいですね。10年後20年後の2030年代がどういう社会なのかをイメージすることも大切です。一歩先を行く卒業生をロールモデルに、働き続ける力を養ってもらいたいと考えています。
■女性キャリア開発研究センターが目指すもの
阿部:最後に、女性キャリア開発研究センターの今後(展望)について教えてください。
光華:卒業生、在学生が仕事を続けられるような支援を行うために、まずは卒業生の就業状況を把握し、就業を継続するにあたっての促進要因・阻害要因、卒業生のニーズなどを調べていきます。その結果をもとに、就業を継続するための支援策を考えていきます。この取組は、働き続ける女性を増やすことで京都のまちを活性化させることにもつながると思います。
女性が働き続けるために必要な支援策は男性も一緒に考える必要があります。本学は女子大学ですが男性の教職員も多いので、女子学生、女性教職員、男性教職員にも意識調査を行い、男女共同参画に対する理解を広げていきたいですね。
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インタビューを聞いていて感じたのは、在学生、卒業生も含めた女性支援は女子大学の中ではかなり力を入れているのではないだろうか、ということです。特に、卒業生の就業継続支援の研究は他大学では中々見られない取組です。
1年目からアクティブに活動されている女性キャリア開発研究センターですが、開設を記念して12月3日(土)に「男女共同参画、今を生きるみんなが言いたい・訊きたい・知りたいこと」をテーマにシンポジウムが開催されます(受付時期・受付方法等、詳細は追ってHPなどでお知らせする予定です)。お話をしてくださるのは、女性の生き方・働き方については斎藤由香さん(エッセイスト、北杜夫氏の長女、株式会社サン・アド営業部部長)、男性の生き方・働き方については育休取得経験のある男性たちです。女性だけでなく、男性のキャリアについても考えようという試みで、シンポジウム終了後には交流会も開催されます。是非、「今の働くこと」を知りたい方は参加してください。
取材にご対応いただいた女性キャリア開発研究センターの加藤千恵センター長と、真東美也子副センター長、阿部先生ありがとうございました。
以上、「加盟校レポート」京都光華女子大学編をお送りしました。