トップページ ニュース 福​知​山​公​立​大​学​ ​北​近​畿​地​域​連​携​セ​ン​タ​ー​「​K​i​t​a​-​r​e​(​キ​タ​ー​レ​)​」​の​取​り​組​み

福​知​山​公​立​大​学​ ​北​近​畿​地​域​連​携​セ​ン​タ​ー​「​K​i​t​a​-​r​e​(​キ​タ​ー​レ​)​」​の​取​り​組​み

2017 / 5 / 29 / 月
福​知​山​公​立​大​学​

■今回の舞台は福知山公立大学です。
こんにちは。教まちや事務局です。
今回は、福知山公立大学を訪問しました。
今年度から、地域連携のための拠点施設として北近畿地域連携センター「Kita-re(キターレ)」が本格稼働したと聞き、どのような事業を展開されているのか、お話しを伺いにやってきました。
取材にご協力いただいたのは、福知山公立大学准教授、北近畿地域連携センター委員会委員の杉岡秀紀先生です。

■地域のための大学
事務局:北近畿地域連携センターの前に、まず、貴学についてお伺いしたいと思います。
杉岡先生:本学は、2016年4月に前身の私立大学から公立化し、福知山公立大学としてスタートしました。現在、地域経営学部の1学部、地域経営学科、医療福祉経営学科の2学科体制で運営しています。
基本理念として、「市民の大学、地域のための大学、世界とともに歩む大学」を掲げ、この理念のもと、学部では、「地域(ローカル)に根を下ろし、世界にはばたく人財(グローカリスト)育成」をめざしています。

■徹底的に地域に向き合う「地域協働実践型教育」
事務局:実際にどういった教育を展開されていますか。
杉岡先生:本学は、「徹底的に地域に向き合う」をキーワードに特色ある教育を展開しています。中でも、「地域協働型実践教育」は、本学の一番の強みであり、どこにも負けない実践教育プログラムだと自負しています。
具体的には、1~2年次に「地域経営演習」という演習系科目で学外に出て、地域の方々と交流し、地域課題を調査・分析するための基礎的な方法を身に付け、3年次からは「地域経営研究」という科目で、自身の関心にもとづきテーマを絞り込み、地域の方々と協力しつつ地域課題の解決に取り組みます。これらのフィールドワークの時間を十分に確保するため、全学生・全教員が地域に出る曜日を設定するといった時間割上の工夫を行いました。
事務局:全員が地域に出るというのは、すごいですね。
杉岡先生:ゼミで地域に出ようとしても、前後の時間に講義科目があるため、全員の時間割が合わず、十分なフィールドワークが行えなかったり、地域連携を進めようとしても、教員だけの地域連携に終わってしまった等の反省から、「教員だけでなく、学生も地域に出るんだ」と、しかも「全員で出るんだ」という決意で「地域協働型実践教育」が生まれました。

まだ、卒業生が出ていませんので評価はできませんが、学生は皆、とても熱心に取り組んでいます。

■北近畿地域の発展に寄与する北近畿地域連携センター「Kita-re」
事務局:徹底的に地域に向き合おうという姿勢がとてもよく伝わりました。「北近畿地域連携センター」について伺いたいと思います。
杉岡先生:特色ある教育によって「グローカル」な視点をもった人材を育成することとあわせて、地域の生活や産業を育んでいこうということで立ち上げたのが、「北近畿地域連携センター」です。
事務局:名称は福知山市でなく「北近畿」となっています。
杉岡先生:確かに本学の設置者は福知山市です。ですが、福知山市しか見ないというスタンスでは、近隣地域からそっぽを向かれてしまいます。福知山市だけでなく北近畿地域の発展に向けて力を尽くしていかなければならないということで、「北近畿地域連携センター」としました。
事務局:北近畿全体で地域の課題に取り組んでいこうということですね。具体的にどのような事業を展開されていますか。
杉岡先生:主に、①地域連携にかかる窓口・紹介・コンサルテーション、②地域連携事業の企画・立案、③市民学習に関する企画・立案、④地域連携にかかるシンクタンク機能、といった4つの事業を推進しています。
①については、日々、このセンターに地域の方々から様々な相談が持ち込まれます。「○○先生に講演をお願いしたい」「学生を派遣してほしい」「一緒に△△の研究をしたい」など、相談内容に応じて、該当する教員へつないだり、委員会で諮ったりしながら、対応しています。
②については、まずは北近畿地域の方々に、本学が福知山市だけでなく北近畿全体の発展に寄与していくんだということを知っていただこうと、2016年度は開学記念連続講演会「地域のための福知山公立大学に期待するもの~福知山公立大学を使いこなすために~」と題して、京都府北部5市2町で講演会を計7回開催しました。地域活動で高い実績をあげている方々を講師としてお招きし、延べ約1,000人の方に参加いただきました。2017年度は、兵庫県北部地域で計4回の講演会を予定しています。
③の市民学習は、現在は、「北近畿地域連携センター」と兄弟のような委員会である市民学習・キャリア支援委員会が生涯学習講座を展開していますが、今後は1つのセンターに統合する予定になっています。
④に関してですが、今年度、シンクタンク機能を担う民主導の組織として、京都丹後鉄道を運営するWiller TrainsやJR西日本、京都北都信用金庫、但馬信用金庫、京都工芸繊維大学、兵庫県立大学と本学(事務局)が連携し北近畿連携協議会を発足させました。2017年度は、高齢者の運転免許返納問題と若者定住促進について議論する予定です。

そして、こうした事業の拠点として、2017年3月に開設したのが、ここ「Kita-re(キターレ)」です。現在は、北近畿地域の企業等に活用頂く「コワーキングルーム」、地域の方々と学生等が交流する場として「カフェ&ミーティングルーム」を設けています。今後は、ワークショップなどを行える専用ルームなど、更に整備を進めていきます。一方で、市街地から少し離れているキャンパスまで足を運ぶのが難しい方のために、まちなかキャンパスの整備についても現在検討を進めているところです。これは、本学のみで完結するのではなく、包括協定を締結している団体との連携も視野に入れています。


その他、特色ある取り組みとして、前身大学から引き継いだ高校生対象の地域活性化コンテスト「田舎力甲子園」があります。2016年度は、全国から20の都道府県、37校から応募があり、最終プレゼンと表彰式を本学でおこないました。受賞作はいずれも非常にレベルが高く、我々も勉強になったというのが率直な感想です。なお、2017年度からは、実行委員会を「北近畿地域連携センター」から切り離し全学体制で進めることとなりました。
事務局:様々な機関と積極的に連携しながら進められていますね。
杉岡先生:自大学だけで完結して活動していては、イノベーションは起こりません。
この基本認識のもと、2016年4月の開学当初から戦略的に様々な関係機関と包括協定を締結しています。2016年度はまず京都工芸繊維大学と包括協定を結びました。福知山市旧町の大江町、夜久野町、三和町の協議会、さらに京都北都信用金庫と締結し、今年度もまもなく但馬信用金庫と締結します。今後も引き続き、様々な機関と包括協定を締結する予定です。
また、連携が重要だ、というのは、学生も同じです。自大学だけの視点だと、視野が狭くなり柔軟な発想ができなくなります。イノベーションを起こすためのキーワードはやはり「多様性」ですから。今後は学生が他流試合できる場をより一層創出していきたいと考えています。

■北近畿地域の発展に向けて
事務局:課題と今後の展望についてお聞かせください。
杉岡先生:受験生に、本学の特色ある教育に対して共感してもらえ、2017年の一般入試では、約11倍の志願倍率となり、国公立全体で5番目の高さとなりました。受験生が全国各地から集まり、地域を問わず本学の教育に対し関心をもっていただけるのはうれしいことです。ただ、地元京都、特に足元である福知山市民からの入学生が少ないことはとても残念ですね。
また、学生と話していての感覚的数字ですが、既存の学生は約1/3が公務員志望で、また、およそ3/4が、できれば卒業後は福知山市でなく出身地に戻りたいと言っています。4年間学ぶ中で、出口は公務員だけでなく民間という道、たとえば起業という道もあるんだと、選択肢を広げてもらいたいですね。更には、福知山市をもっと好きになってもらい、就活時には、北近畿地域内での就職、移住を選択する学生も増やしていきたいと考えています。本学で、他地域出身の学生を4年間教育し、出身地へ返すだけでは、もったいないですから。足元である福知山市に還元できる仕組みを作ることもとても大きな課題です。
事務局:それには連携が欠かせないということですね。
杉岡先生:その通りです。繰り返しになりますが、自大学で完結せず、様々な機関と連携しながら徹底的に地域に向き合って初めてイノベーションがおこると考えています。また、本学の設置者は福知山市ですが、福知山は言うまでもなく、広く北近畿地域の発展に寄与することを目的としています。
その意味で、今後も引き続き、福知山市だけでなく北近畿地域を活性化する、という本学の役割を地域に情報発信するとともに関係機関との連携をより一層加速させていきたいと思います。

■最後に
インタビューに応じていただいた杉岡先生からは、自大学に対する誇りと、将来、大学や地域をもっとよくしていこうという気概をひしひしと感じました。
聞けば、中退者もわずかしかいないということ。大学の思いに共感した学生が集まり、大学もそれにきちんと応えている証拠ではないでしょうか。
「地域協働型実践教育」に代表されるとおり、大学の理念を構成員に徹底した上で、全学を挙げて取り組もうという姿勢。学生数も多く市内の利便性のよい立地にある大学にとっては特に参考になるのではないかと感じました。
取材にご協力いただきました杉岡先生、ありがとうございました。

以上、教まちやNews福知山公立大学編をお送りしました。

 

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