京都ノートルダム女子大学
「小規模女子大学の『デジタル活用教育高度化事業』」
こんにちは。教まちや事務局です。
今回は、京都ノートルダム女子大学から、アフターコロナを見据えた、DX推進・教育高度化の取り組みについて、以下のとおり紹介いただきました。
京都ノートルダム女子大学は、「『対話』から始まるND教育」として教学改革に取り組まれ、その実現のため、DXを推進されています。
文部科学省の「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン※」に採択された、デジタル活用高度化の取り組みを是非ご覧ください。
※大学・高等専門学校においてデジタル技術を積極的に取り入れ、「学修者本位の教育の実現」、「学びの質の向上」に資するための取組における環境を整備し、ポストコロナ時代の高等教育における教育手法の具体化を図り、その成果の普及を図ることを目的とした文部科学省の事業。
執筆者:京都ノートルダム女子大学 教育支援部長/ND教育センター事務室長 小林 忍 氏
■京都ノートルダム女子大学の「デジタル」
本学は学部入学定員370人の私立大学です。キリスト教をベースとした建学の精神「徳と知(Virtus et Scientia)」をモットーとしています。カトリックの学校らしく、奉仕の気持ちを大切にする傾向があるように思います。学生と教員との距離が近く、相談しやすい雰囲気があるのはいい所です。
今回は、本学が国の大学改革推進等補助金(デジタル活用教育高度化事業)「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」という長い名前の補助事業に採択されたことについて報告します。本学は取組①「学修者本位の教育の実現」の区分に「小規模女子大学における『ブレンド型授業モデル』の創出―「つまずき経験」で「前向き力」を涵養する個別最適化プラン―」というタイトルで応募し、関西の女子大学では唯一採択されました。採択数は延べ252校中、54校でした。(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/sankangaku/1413155_00003.htm)
のんびりした印象を持たれることも多い本学がデジタル活用などというと意外に思われる方があるかもしれませんが、ちょうど30年前の1991年には「コンピューターセンター」を設け、実は当時としてはかなり先進的な環境を整えていました。以来、基礎情報教育に取り組んできたという素地があり、それが恐らく今回の事業につながっています。
■「学修者本位の教育」に近づけたい
この事業は申請までの時間的余裕もあまりなく、本学にとってはかなりのチャレンジでした。「学修者本位の教育」とあっさり言いますが、これは「(学生に何かを)教える」から「(学生が何かを)できるようにする」へと大学が改革することを求めるものです。
本学でも以前から、カリキュラムや授業をどう変えればよいのか議論を続けています。2021年度からは「『対話』から始まるND教育」として、「卒業研究をゴールとした学びの道筋」構築などの教学改革を全学で実行しています。そして、その実現にはDX(デジタル・トランスフォーメーション。ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させることなどと定義される)の推進がもはや不可欠だと考えています。
これらのことが進行中だったところにCOVID-19が来て、否応なくオンライン授業を経験することになり、そのメリット・デメリットもだんだん見えてきました。教務委員会が学生を対象に3回にわたって実施した「オンライン授業に関するアンケート」は、学生が結果の分析にかかわり、授業改善への提案もしてくれました。
(2021年1月第3回結果報告 https://www.notredame.ac.jp/news/news/3449 )これらの提案を踏まえるならば、恐らく、収束後に全て以前のままの対面授業に単に戻すことにはなりません。とすれば今、採択されてもされなくてもDX推進計画を立てておこう。そう考えたのが応募の「動機」でした。
■本学のDX推進・教育高度化の取り組み
小規模である本学におけるDXは、学内資源を集中的に投じにくいなどのツラさはありますが、それでも少しずつ前進しています。LMS(Learning Management System)は2017年度から「manaba」を全学で導入し、今では多くの授業で欠かせない存在になっています。
このような状況の下、次の3つの柱で「デジタル活用教育高度化」に取り組むことにしました。
[イ]「ブレンド型授業モデル」創出により教育課程をレベルアップ
オンラインを活用した教育のよさは確かに実感しましたが、本学は対面を基本とする通学制大学です。そこで、他大学の先進的な授業に学ぶ、学内の好事例を共有するなどFD活動を活性化し、対面とオンライン両方の長所を生かした授業を追求します。古くなった教務システムを更新・拡張してIR分析機能の強化もめざしています。
[ロ]教育ビッグデータ活用で「いつでも・どこでも」個別最適な学修
eラーニングの学習ログのデータ分析の試行などを通して、学生が自分に合った学修機会を選び取れるような基盤整備をめざします。対面とオンラインが混在すると受講しにくいため発話を伴う学習ができる個別ブースを設置するなど学生が学びやすい環境も用意します。
[ハ」「情報活用力プログラム」を新設しDXを加速できる人材を養成
学部横断で「情報の科学と倫理」「AIとデータサイエンス入門」など30単位を修得すれば修了証が授与されるプログラムがスタートしました。履修者の履修指導・相談や履修者同士のコミュニティ形成・維持の支援、各自の問題意識に応じたeラーニング活用も進めます。(https://www.notredame.ac.jp/ndec/program.html)
■取り組みの推進・運営の体制
本学では学長、各学部・研究科、ND教育センターの長などで構成する「教学マネジメント会議」が教育課程編成等の全学的な方針策定及び成果の検証・改善を担っています。この事業は、同会議の方針に基づきND教育センターを中心としたチームで推進し、その成果を学内外に発信することでさらに改革の機運を高めるという循環をめざしています。(https://www.notredame.ac.jp/ndec/index.html)
現状を正直に言うと、上記[イ][ロ][ハ]は多岐にわたるため、具体的にどうするかを考え、調整しながら何とか前に進めているような状況です。5月に予定していた「情報活用力プログラムキックオフセミナー」はいきなり延期になりました。「学修者本位の教育」への転換はシステムを導入すれば一気に解決できるほど単純なものではないので、行きつ戻りつするのも当然です。多様な営みを学内に多層的に展開し、地道に教員・職員が協働して少しずつ進めるしかないと思っています。
■おわりに
世界はますます小さく、予測しにくくなり、多様な他者との「対話」が重要になっています。学生たちには、大学のさまざまな場面で、自分なりの方法で失敗や試行錯誤を重ねながら課題を発見し解決する力――「つまずき経験」を通して壁を越え、不確実な時代に自信を持って学び続ける「前向き力」――を身につけてほしいと願っています。