佛教大学 平成28年度熊本地震 災害ボランティア活動
■平成28年熊本地震をうけて
こんにちは。教まちや事務局です。
今年4月に九州地方で相次いで発生し、特に熊本県に甚大な被害をもたらした地震。
佛教大学ではこの8月、『平成28年熊本地震 災害ボランティア』として、熊本県内の被災地益城町に学生ボランティア総勢20名を3班に分けて派遣しました。
今回の教まちやNewsでは、佛教大学の災害ボランティア活動についてご紹介したいと思います。
取材にご協力いただいたのは、研究推進部社会連携課の森脇さん、丸谷さん。そして、社会福祉学部4回生の林さん、土居さんです。
実際に現地でボランティア活動を経験した皆さんの濃厚な体験談はとても興味深く、取材時間はあっという間に終了してしまいました。
その体験談のご紹介に先立ち、まずはこの活動の概要を簡単にご紹介したいと思います。
■その時、佛教大学は
平成28年4月14日以降の地震をうけて、佛教大学では4月18日から学内で募金活動を行いました。その際、「被災地のために他に何かできることはないか」という声があがりました。その声を受けて、“ALL佛大”を掲げ、浄土宗のネットワークを活かした災害ボランティア活動の企画が立ち上がり、参加学生の募集に至りました。
募集開始の7月21日から2日間で、募集定員の20名を大幅に超える35名以上の申込がありました。
参加学生の構成は、6学部8学科から1回生2名、2回生~4回生が各6名。さらに、教職員12名が加わりました。
災害ボランティアの派遣期間は、8月3日から22日の20日間で、その期間を3クールに分け、第1班・2班・3班に別れて熊本県益城町へと派遣されました。
益城町では、避難所である益城町総合体育館と、公民館的な施設である「よかましきハウス」が主な活動場所でした。
主な活動内容は、避難所内に開設されているプレイルームの運営と「よかましきハウス」の運営補助で、子どもたちの学習支援や遊び相手、映画上映会の開催、高齢者との交流や引越しの手伝い等を行いました。
各班の活動概要については、以下のとおりでした。
【第1班】
日程:8月3日~9日
参加者:12名(学生6名、教職員6名)
◆第1班は、まず現地のニーズの掘り起こしから始めました。
佛教大学同窓生が住職を務める阿弥陀寺を訪れ、震災当時の様子を伺ったり、「よかましきハウス」の副館長に益城町周辺を案内してもらい、被害の様子を目の当たりにすることで、地震の被害の大きさを改めて感じたそうです。
そして、今後の活動の方向性や方針を決定し、企画を立てていきました。
【第2班】
日程:8月9日~15日
参加者:10名(学生6名、教職員4名)
◆熊本駅到着後すぐに、入れ替わりとなる第1班から1時間程度の引継ぎを受けました。
被災地の方々と交流することで、多くの方が何らかのストレスを抱え、健康面にも影響が出ているというような、目に見えにくい被害の大きさを感じたそうです。
また、この期間は避難所から仮設住宅に移動する方が多い時期であったため、その方々のサポートも行いました。
【第3班】
日程:8月15日~22日
参加者:13名(学生8名、教職員5名)
◆活動最終日がちょうど小学校の2学期の始業式ということもあって、子どもたちの学校への送り出しが最後の仕事となりました。その後、お世話になった方々へ活動終了の報告と挨拶に回りました。また、熊本学園大学の学長室にも訪問させていただきました。
現地で被災地の方や子どもたちに寄り添い、内側に抱えている不安や悩み、ストレスなどに少しでも向き合うことができる機会になったと感じたそうです。
■参加者の声
取材当日は、学生ボランティアの土居さん(第1班)と林さん(第2班)にお話を伺いました。
Q:災害ボランティア活動を始めたのはいつからですか?
林さん:2回生から災害ボランティア活動を始めて、今回が7回目です。被災地の現状は自分の目で見てみないと分からないと考えており、またフットワークが軽いこともあり、チャンスがあればいつも活動に参加しています。
実は、今回の派遣前の5月にも、熊本の南阿蘇村の災害ボランティア活動に参加しました。そこで、また熊本に行きたいと思ったのが、今回応募したきっかけでした。
土居さん:私は、3回生から災害ボランティア活動を始めて、今回が5回目です。私も5月の南阿蘇村の災害ボランティア活動に参加しましたが、それも含めてこれまで参加したのは、2・3日の単発での活動でした。今回の災害ボランティア活動は長期間の活動ができるということが、応募したきっかけでした。
Q:活動中の印象的な出来事を教えてください。
林さん:現地入り初日、高齢者の方から「子どもがあいさつをしないので、注意してほしい。」と、少し厳しい口調で指摘されました。子どもも大人も、お互いに慣れない避難所での共同生活にフラストレーションが溜まっているのだと感じた一瞬でした。
その反面、今回の震災のおかげで、良い意味で今までの自分ならできなかったであろうことができるようになった、という方々の声を聞く機会も何度かありました。
「震災が自分を変えてくれた」・「外から見ている人にとっては震災は傷に見えるかもしれないが、自分にとっては希望に見える」という言葉がとても印象的でした。
土居さん:私も、避難所で暮らす方々が抱えているストレスのようなものを感じました。プレイルームなどで子どもたちを見ていると、攻撃的な言葉や態度が見られましたが、それは子どもに限ったことではありませんでした。避難所暮らしという環境が、被災地の方々に与える影響について考えさせられました。
また、実際に倒壊した家屋を視察した際、子どもの目線の高さで見た光景がとても印象に残っています。暗闇の中で、いつもと違った目線で見ることで、実際に現地に赴くことの大切さを改めて感じました。
Q:現地での活動をとおして苦労したことや、感想などを聞かせてください
土居さん:各クールで、それぞれの班の個性を出しながら活動できたのではないかと思います。私たちの1班は、あえてリーダーを決めずに活動しました。学部も回生も違うメンバーの集まりで、ボランティア経験も今回が初めてというメンバーもいましたので、年長者や経験者が先頭に立ち過ぎて発言しにくくなったり、活動しにくくなってはいけないと思ったので、あまり自分が出過ぎないように注意しました。そのため、小単位での個別ミーティングなどを常に実施するといった工夫をしました。
メンバーそれぞれの個性を活かした活動ができたと思います。
大学生活最後の夏休みで、何かとスケジュール的にも厳しかったですが、個人ではなくみんなで参加したからこそ乗り越えられたこともたくさんあり、今回のボランティア活動に参加して本当に良かったです。
林さん:1班は訪問先から高い評価を受けていました。私たちの2班はそれを考慮し、1班の作り上げた基盤を崩さず、そのうえで2班の個性を出した活動をすることを心がけましたが、その点には苦労しました。1班の真逆を意識したわけではないですが、リーダー・副リーダーは最初に決めました。そして、全体ミーティングを重視し、全員を巻き込むスタイルにしました。
今回のメンバーは何か特別な技術を持っているわけではなく、気負わず、被災地の人たちと触れ合いたいという気持ちで、単純に“行きたい”と思って集まったメンバーです。後日学内で行う報告会では、ボランティア活動に興味のない人たちの前でも話をします。これをきっかけに、少しでもボランティア活動に興味を持つ人が増えてくれれば嬉しいです。
■今後に向けて
最後に、職員として今回の災害ボランティア活動に参加された森脇さんのコメントです。
森脇さん:今回の災害ボランティア活動では、引率者としての職員の目線に加えて、学生と一緒に活動し、学び、悩む、ボランティア活動への参加者としての目線でも現地を見ることができ、とても貴重な経験になりました。
被災地は社会の縮図といわれるように、良くも悪くも色々なものがむき出しになっています。世代や価値観、生活スタイルの異なる人々の共同生活に寄り添うことで、本当に多くのことを学ばせていただきました。後日の学内報告会で、今回の災害ボランティア活動はいったん落ち着きますが、現地の復興はまだまだ進んでいません。今回の災害ボランティア活動後にも、学生が自主的に被災地を訪問していますし、今後大学としてどこまでできるかはわかりませんが、継続的な支援を続けていきたいです。現在がゴールではなく、今回の活動を次につなげていきたいと思います。
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皆さん異口同音に、「継続的な支援が必要だ」・「現地の復興はまだまだ進んでいない」と話されていました。
2011年3月に発生した東日本大震災での震災関連死(建物の倒壊や火災、津波など地震による直接的な被害ではなく、その後の避難生活での体調悪化や過労など間接的な原因で死亡すること。)の死者数は、震災から5年たった今でも増え続けています。
また、被災体験や近親者の死が原因で、潜在的にメンタルヘルスの状態が悪化している人も少なくありません。
被災した方々に一緒に寄り添うこと。これは、簡単なようでとても難しいことです。被災地の復興をお祈りするとともに、このような活動をされている方々に心からエールを送りたいと思います。
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以上、佛教大学「平成28年度熊本地震 災害ボランティア活動」についてご紹介しました。
教まちやNewsでは、大学コンソーシアム京都およびその加盟校の教育に関する特徴的な取り組みを取材し、掲載しています。
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