「加盟校レポート」21 京都産業大学「進路指導用京都産業大学データブック」
■京都産業大学入学センターへ
こんにちは。教まちや事務局です。
今回は、大学コンソーシアム京都FD企画研究委員の先生に加盟校の活動をご紹介いただく「加盟校レポート」シリーズです。
第21回は、京都産業大学現代社会学部現代社会学科の耳野健二先生より、「進路指導用京都産業大学データブック」(以下、データブック。)について、ご紹介いただきました。
各大学では、様々な広報誌を作成されていますが、京都産業大学では、2017年6月に重点地域別のデータブックを作成されたとのこと。対象を高校教員に特化した地域別のデータブックは珍しく、その詳細に迫るべく、事務局スタッフは、早速、入学センターに取材に行ってまいりました。
取材にご協力いただいたのは、入学センターの雨宮ゆりさんです。
早速、データブックを見せていただきました!
データブックは北陸版、中国版、四国版の3種類。中を開けると、様々な数値が見やすいように工夫されていました。
今回の取材では、このデータブック作成の背景・経緯と工夫等について探りたいと思います。
■データブック作成の経緯
事務局:まず、今回、3つの地域の高校教員向けにデータブックを作成された経緯についてお聞かせください。
雨宮:本学では、非出願者の本学に対する意識・要因を把握するために、定期的に、受験動向調査をおこなっています。これは、本学を受験しながらも最終的に他大学に進学した生徒や、本学に資料請求等で接触しながらも出願に至らなかったような生徒を対象にした調査です。
この調査結果から、入試広報の課題が見えてきました。例えば、本学を知ったきっかけに関する設問に対して「受験情報誌」と回答した割合は高かったのですが、「高校の先生から勧められた」との回答の割合は低くなっていました。
一方で、辞退者のうち関西の競合他大学に進学した者の場合、高校の先生からその大学を勧められたという割合が高くなっていました。
『本学の知名度は一定程度あっても、高校の先生方が本学を生徒に勧めたいと思っていただけるほどには、本学の特徴や魅力を十分に伝えきれていないのでは。』
こうした課題が明確になり、データブックを作成することになりました。
■様々な工夫が詰まったデータブック
事務局:実際にデータブックを拝見すると、京都の魅力の他、Uターン就職の実績や当該地域出身学生数など、地域によって内容を変えて、様々な情報を数値で示しながら発信されています。
雨宮:その地域で具体的にどういった情報を届けるべきなのか、先の受験動向調査の他、学校基本調査や入試結果などを分析しながら検討を進めました。
例えば、北陸版では、京都への進学率が低くなっていることから、京都に目を向けてもらうため、京都の魅力に関する情報を他に比べて多くしました。
また、学びの特色を伝えるページでは、各学部の紹介欄に「こんな学部を目指す生徒におすすめ!」という欄を設け、それぞれの地域で本学の併願先となっている大学の学部・学科を掲載し、併願校の一つとして選んでもらえるように工夫をしました。
さらに、お忙しい高校の先生方でもパッと見て要点が伝わるように、デザインも工夫をしました。例えば、文章では伝わりづらいことをデータとイラストで視覚的に表現したり、大手企業への就職を印象づけるために、就職実績は社名の記載だけでなく企業のロゴも使用しています。
また、進路指導に役立つかという観点から地域別に情報の取捨選択を行い、大学案内や入試ガイドに掲載している情報と重複しないようにもしました。
■データブックの反響と今後の展開
事務局:データブックは今年6月に完成したと伺いました。このデータブックは、どのように活用されていますか?
雨宮:各高校へ郵送するとともに、高校教員対象の入試説明会で配付しました。また高校を訪問する際に持参し、これを使いながら説明をしています。 事務局:データブックに対する反響はいかがでしょうか?
また、高校別の出身学生数に対する関心も高いようです。次年度は、本学と各地域の企業や高校とのつながりを示すデータを充実させたいと考えています。 事務局:最後になりますが、今後の展開をお聞かせください。
雨宮:データブックを通じた高校の先生方へのアプローチは、引き続き積極的に行う予定です。そのために、しっかりと効果検証をし、次年度取り上げるデータを精査したいと思います。
今後は、競合他大学と同じような広報では、学生募集はますます厳しくなります。データに基づいて、「京都産業大学ならでは」の、より効果的な戦略を追求していきたいと思います。
■最後に
今後、18歳人口は2018年(117万人)から再び減少し、2031年度には100万人を切り99万人、2040年には88万人と予測されており、各大学の入学定員が現状のまま維持され、さらに大学進学率が現在と変わらなければ、約20年後には、計算上、入学定員1000人の大学が100校以上供給過剰になると言われています。
各大学の学生獲得競争はより一層厳しくなり、教育の充実と併せて、入試広報戦略がこれまで以上に重要になってきます。
こうした中、データに基づいた戦略的な入試広報の一例として、京都産業大学の事例を紹介させていただきました。
その地域の特徴、また、求められる情報は何かを様々なデータを分析しながら把握し、その地域に合った情報を積極的に発信、また、競合他大学と比較しての自学の特色を訴求する姿勢は、どの大学にも求められるのではないかと感じました。
以上、「加盟校レポート」京都産業大学編をお送りしました。